鳴り止め

ここ何年かバンドの音楽が聴けなくなった。ラジオを聴いてるときに流れてくると再生を止めるか、音量を下げてしまう。自分の性格として一度失敗したことに対して人一倍気にしてしまうようだ。過去のことをくよくよしないというのをモットーにして生きてきたつもりだけど、音楽に関しては違うみたいだった。思えば中学のときからずっと夢中で音楽を聴いたりギターを弾いたりしていた。その音楽に対してうまくいかなかったり失望したりしている今が受け入れられなくなっているのかもしれない。他に代えられないものなので、自分のなかからなにかが無くなった感覚を抱えている。いつかもやもやすることなくバンドを聞けることがくるかはわからないけどその日がくるまでジッとしているしかない。

 

てれびのおばけという舞台を配信で見た。主人公の部屋に昔テレビのプロデューサーだったというおばけが住みついており、話が進むにつれて彼がどんな人物だったか、どうして命を落としたのかということが浮かび上がってくる。セリフのなかで「じぶんたちは、生きるということを毎日選択している。生きる、生きる、生きる。生きるを選択しているように、死ぬを選択することだってできるんだ。」というものが印象に残っている。4人の俳優さんは全員演技が上手で、内容も面白かった。発せられる言葉のひとつひとつが魂のこもったものだった。

 

テッド・チャン「息吹」に収録されている「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」という短編がおもしろかった。自分のなかに今後残り続ける作品だと思う。AIアバターが人間に寄り添いペットにように飼うことが当然の世界が描かれており憧れてしまった、それがたとえ人間にあらかじめプログラミングされたものであったとしても。デジタルペットの友達ができたらどんなにいいことか。自分のこの価値観は、小学生のときにニンテンドー64でどうぶつのもりをやりはじめたときに芽生えたのだと思う。また、テッド・チャンの小説にはどの作品にも自由意志というモチーフが隠れており、自律と他律ということを考えた。ただ最近思うのは、人生には自分でコントロールできない要因が多くあり、うまくいかないときはそういうときもあるということにしてコーヒーでも飲みながら本を読むのが良いということだ。鬱々としてからっぽな気持ちのまま過ごしている。いつかこの気持ちが晴れますように。